障害者の仕事と働き方を、障害者雇用当事者が掘り下げる

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はじめまして!koh(こー)といいます。発達障害の当事者です。過去には重度の鬱や、誤診によって、無駄としかいいようのない服薬調整などを経験しました。
ぼくは現在、パートナーと娘と3人で暮らしながら、障害者雇用で会社員として働いています。また、さまざまな障害やマイノリティ性を抱える方々と「仕事について語ろう」というコンセプトのイベントを主催し、さまざまな当事者のお話を聞いたりしてきました。
今回はぼくが知っている「障害者と仕事」について、障害者雇用の話題を中心にご紹介していきたいと思います。

障害のある子どもを育てるときにどうしても気になる「この子は将来食べていけるのだろうか?」という疑問に、少しでもお応えできれば嬉しいです!

 

 

障害者の職業にはさまざまな選択肢がある!

 中央省庁の障害者雇用水増し問題A型事業所の倒産問題など、なにかと暗い話題の多いテーマですね。しかし実は、障害者だからこそできる働き方もたくさんあり、制度を活用して自立している当事者は数多く存在しているのです。

 

障害者雇用とは?

まずは私自身も当事者である障害者雇用についてご紹介します。

障害者雇用とは、「会社は障害者も雇用して仲良くやっていきましょうね」という主旨の法律に基づく仕組みのことを言います。「障害者雇用促進法」と呼ばれるその法律では、民間企業や公的機関は社員数のうち一定の割合以上の障害者を雇用することが義務付けられています。障害者とは、障害者手帳療育手帳の所持者等のことを指します。

一般的には「障害者枠」と言われる特別な枠を設けられて雇用される場合が多いです。しかし「障害者枠」のルートを使わずに「一般枠」で障害を開示して障害者雇用制度を適用するケースや、中途障害によって途中から障害者雇用に切り替わるケースもあります。
法律では「法定雇用率」が定められていて、現在引き上げトレンドにあります。民間企業では2018年の4月に2.0%から2.2%へと上がったばかりで、さらに2021年4月までに2.3%に引き上げることが既に決まっています。例えば社員数が1000人の会社なら、22人以上の障害者を雇用する義務があるということになります。
国や地方公共団体の法定雇用率は現在、2.5%となっています。2018年に発覚した中央省庁による障害者雇用水増し問題では、この法定雇用率をクリアしたように見せるために嘘のカウントを行っていたことが批判を浴びました。

ちなみに水増し問題では再調査が行われましたが、中央省庁が極端に低い数字となった一方、独立行政法人等では2.54%と高い数字も出ていますきちんと雇用を進めている機関もあることは意外と知られていないように思います。

平成30年 国の機関等における障害者雇用状況の集計結果

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03026.html

 

働くときに障害に対してどれだけ配慮してもらえるのか気になるところですが、2016年4月から「合理的配慮」が雇用主の義務となっています(ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼさない範囲内とされています)。ですから正当な理由がなく合理的配慮をしない企業や機関は、原則的に法律違反となります。実はそんなところまで、整備が進んできているのです。

国の出している「合理的配慮指針」には障害ごとの合理的配慮の事例も載っているので、よかったら読んでみてください。

合理的配慮指針

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11704000-Shokugyouanteikyokukoureishougaikoyoutaisakubu-shougaishakoyoutaisakuka/0000078976.pdf

 

障害者でも、所定労働時間が週20時間未満の労働者は障害者としてカウントされません。つまり当事者がいわゆる「障害者枠」に入るためには、まず1日4時間以上の勤務(週5の場合)というハードルがあります
しかし最近では20時間未満の勤務でも補助金が別途出る制度の導入に向けた動きもあり、今後はより柔軟な働き方が可能になると思われます。

雇用義務に反して、法定雇用率を満たしていない会社もあります。その場合は「障害者雇用納付金」を国の機関に支払うことになります。金額は1ヶ月につき、5万円×雇用率未達人数で算出します。つまり1000人の会社で障害者を雇用していなかった場合、未達人数22人×5万円で月110万円、1年で1320万円の支出になります

お金の話でつけ加えると、障害者雇用に際して会社には補助金が支給される場合があります。例えば「特定求職者雇用開発助成金」では、中小企業が精神障害者を1人フルタイムで雇用するだけで、240万円の補助金が3年で分割支給されます。他にも「障害者雇用調整金」等の補助金がいろいろとあります。

厚生労働省特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html

 

お金についていったんまとめます。

中小企業が1人の精神障害者を雇用することによって1年で80万円(240万円÷3年)もらえて、60万円(5万円×12ヶ月)節約できるので、実質140万円プラスの状態から雇用が開始されるということになります。この算数はきわめて重要だと思います。

また、障害者雇用に消極的な会社にはハローワーク等から指導が入り、改善が見られない場合、社名が公表されるようになっています。

厚生労働省平成28年障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000157838.html

これだけ何重にも手厚く、障害者雇用制度は成り立っているのです。課題はたくさんありますが、制度設計自体は当事者としてありがたいものだと感じますし、少しずつ追い風が来てるのではないかとぼくは思っています。


[参考]
厚生労働省障害者雇用対策」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/index.html

福祉事業所という選択も

「就労継続支援事業所」という場所で働く方々は日本に約30万人います。年々増えていっているようです。
こちらは障害者雇用とは異なり、障害者手帳がなくても利用できる場合があります(※ただし障害者雇用にも一部例外あり)。

就労継続支援事業所には「A型」と「B型」があります。

「A型」では、事業所と利用者は雇用契約を交わします。そのため最低賃金以上の賃金が保証されているところが特徴です。

一方で「B型」では、福祉の色合いがA型よりも強く、雇用契約は交わされません。そのため、最低賃金等のルールは適用されず、「工賃」というかたちで対価が払われます。B型事業所の仕事は軽作業や農業などが多いのですが、中にはアートの展示やグッズ販売、あるいは音楽のライブパフォーマンスを事業としている事業所もあり、今後どのような事業所が立ち上がっていくか、楽しみでもあります。

 

在宅ワークが向いている人もいるかも

ぼくの友人は、休職の最中に発達障害が発覚しました。診断をもとに自己分析を進めていくと、なんとオフィスの環境がもっとも強く体調に影響していたことがわかったのです。彼女が特に苦手としていたのが、電話の音でした。感覚過敏が原因で、オフィスで間断なく鳴り響く音に彼女は疲弊していたのです。

彼女は会社と話し合いをした上で、在宅ワークに切り替えて復職します。

障害者雇用に限らずとも、在宅ワークをする人は徐々に高まっています。働く際の「環境」という大きな壁は、避けて通れる時代が到来しつつあるのかもしれません。

 

思い切ってフリーランスの道へ

educartの代表karmaは、フリーランスとして写真や歌を仕事にしています。
彼女いわく、フリーランスに必要なことは「度胸」「根性」「特技(スキル)」の3つとのこと。

健康保険や労災など、クリアしなければならない課題は会社員以上に大きいものの、やはり好きなことをきわめて仕事にできたら、リスクを負ってでも得られるリターンが大きいのでは。「自己肯定感アップ」「自信が身につく」などポジティブな循環も生まれやすいと思います。

最近では、スモールステップで仕事を始められるサービスが増えてきていて、誰でも今日からフリーランスになれます
例えば運転が得意だったり自転車が好きであれば、「ウーバーイーツ」は登録した日から仕事を始められます。写真が好きで、ウーバーイーツの配達をしながら街の風景を撮って集めたり、ダイエットを兼ねて仕事をし、ジム代を節約したりしている人もいるそうです。
個人の時間を売買できる「タイムチケット」といったサービスも人気です。

また、得意なことを活かしてライティングやデザインの仕事を探すなら、「ランサーズ」や「クラウドワークス」を利用する手もあります。

クラウドソーシング「ランサーズ」

クラウドワークス

国がフリーランスへの労災適用などの法整備を進める動きも、今年に入って出てきています。また、2018年1月に「モデル就業規則」が改正され、モデルから副業禁止の条文が外されたこともあり、副業解禁の流れも強まってきています。会社に勤めながらこうした仕事に取り組むこともできそうです。

これまでの働き方にとらわれずに仕事ができる環境は、広がってきています!

 

働かないという選択も大いにアリ

以前の記事でも紹介したように、働かないという選択も大いにアリだと思います。どうしても働くことが難しい障害や時期は絶対にあります。それでも、生きていくことは十分にできます。

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ぜひ障害年金生活保護などについて検討することもお勧めします。役所の生活福祉課などへ赴き、相談してみてください。生活保護は、本当に困っている人のために存在する制度です。障害や病気などで立ちいかなくなっている人が受給するのは正当であり、恥ずかしいことでもなんでもありませんからね。

 

これから、より多様になってほしい

小松成美氏著『虹色のチョーク』では、日本理化学工業株式会社が紆余曲折を経て取り組んできた障害者雇用について描かれています。
中でも印象的だったのが、知的障害者たちが手取りで12〜13万円稼いで、親元を離れてグループホームで暮らせるようになったとき、親御さんが「これで逝ける」とおっしゃっていたことでした。自立にはいろんなかたちがあります。今後はより多様になり、さまざまな「自立」が実現できる社会になってほしいと思います。

虹色のチョーク

虹色のチョーク

 

 

最後に自己紹介させてください

私たち【 educart(エデュカート)】は、yajiとkarmaの2人による【児童福祉×芸術】をテーマにしたチームです。保育園などへの出張音楽講座、障害児向けのアートセラピー、ママやパパが楽しめるイベント開催など、芸術を通して子どもたちに生きる楽しさ・自己表現の素晴らしさを伝えていく活動を行なっています。 

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